りんちゃんへ

りんちゃんへ

あなたと初めて会ったのは、京都に旅行中のこと。
8月の伏見稲荷の階段の溝で、息も絶え絶えになっていた15センチにも満たないような子猫でした。

そのまま地元の人と一緒に動物病院に運んで、私は東京に帰ったけど、
あんな状態だったら生き延びることはできないんじゃないかな、と思っていました。

でも、あなたはすごく生命力があって、奇跡的に回復をして、
地元の人から、「元気になったけれど、引き取り手がいない」って連絡を受けたとき
これは運命かも、と思ったんです。
「犬は好きだけど、猫はかわいいって思ったことがない」っていう母を説き伏せて、
京都にあなたを迎えに行きました。
1か月ぶりに会ったあなたは、相変わらず小さくて、ケージの中で鳴く声もかぼそくて。
家についたら、早速、家中を駆け回って点検してましたね。
「これがわたしの家になるの?」って。

りんって名前はね、子猫の頃、鈴が大好きだったから付けました。
小さい頃はずっと私と一緒に寝ていたんだよ。
ちっちゃな猫の寝息が、すぐ近くから聞こえるのが、不思議で、そしてすごくうれしかったのを覚えています。

猫を飼うことを反対していた母は、すぐにあなたにメロメロになりましたね。
「結婚するときは一緒に連れて行きなさいよ!」って、飼う前に言われてたから
結婚が決まった時、「どうする?りんは私が連れてく?」って聞いたら、涙をためて
「りんを連れていくなら、お母さんも行くわ!」って言われましたっけ。

小さかったあなたは、みるみる大きな、ふさふさの毛並みを持つゴージャスな三毛猫になりました。
そして母と、固い固い絆で結ばれていったんですね。

17才っていう超高齢猫になったあなたが弱っていって、病院通いを始めた頃、母がガンの宣告を受けました。
ガンは初期で、手術をすればよかったんだけど、
その間にもしかしたら、あなたが一人で旅立ってしまうのではないかと、母はそればかり気にしていました。

母の見舞いに行くたびに、あなたが入院している動物病院にも行ったけど、
日ごとに、あなたが弱っていくのがわかって、とてもつらかったです。

手術のあと、麻酔がちゃんと冷めない間も、母はあなたのことをずっとうわごとで気にしていたんですよ。
そして驚異的な回復を見せて、明日退院できるっていう日、私は再度、動物病院にあなたに会いに行きました。
もう立ち上がることもままならなかったけど、「りんちゃん、ママ明日迎えに来るからね、待っているんだよ」って
声をかけたら、「ニャ!」って答えた、あの声、私はいつまでも忘れることができません。

翌日、退院した母の腕の中で、静かに息を引き取ったあなた。きっともう来るべき時は来ていたのに、頑張って待っていてくれたんだね。
可愛い無邪気な子猫の時から、ツンデレでお姫様のような美しい大人の猫になり、
老いてからも私たち親子に静かな愛情を注いでくれたあなたに会えて、家族になれて、本当に良かった。
17年間ありがとう。いつまでも忘れないよ、りんちゃん。